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大阪家庭裁判所 昭和48年(家イ)197号 審判

国籍 韓国 住所 大阪府守口市

申立人 崔貞良(仮名)

本籍 山口県 住所 大阪府守口市

相手方 岸本雅美(仮名)

主文

申立人と相手方との間に母子関係が存在することを確認する。

理由

本件申立理由の要旨

申立人崔貞良は、韓国戸籍上崔建恭(本籍、慶尚南道金海郡○○面○○里二番地)とその妻朴祥花の嫡出子となつているが、真実はそうでなく、相手方雅美と上記建恭との子である。すなわち雅美は、昭和二二年頃島根県○○市で建恭と婚外関係を結びじ来事実上夫婦として同居し、その間に申立人および岸本芳子の二子をもうけたが、その頃建恭は、韓国在住の上記祥花と婚姻関係にあつたため、申立人につき、上記建恭・祥花間の嫡出子として生まれた旨の不実の届出をなし、同人は現にそのように韓国戸籍に登載され、なお芳子については、雅美がその嫡出でない子として出生の届出をなしたので、そのように日本戸籍に登載されている。

そこでこのたび、申立人の帰化申請にさいし、真実の身分関係を明らかにする必要があるので主文同旨の審判を求める。

よつて審案するに、調査の結果によると、申立人は韓国人であり相手方は日本人であるが、いずれも肩書地に住所を有することの明らかな本件について、わが国の裁判所が裁判権を有し、当家庭裁判所が管轄権を有することもまた明らかである。そこで本件の準拠法について考察するに、申立人が、その戸籍上の母との間に親子関係がないとして、相手方との間に母子関係存在の確認を求める準拠法については、法例に直接の規定はないが、法例の嫡出・非嫡出親子関係の成否に関する規定の仕方と母子関係の本質にてらし、法例第一七条を類推し、子の出生当時の母の本国法(申立人出生当時の母相手方の本国法たる日本法)が準拠法となるものと解する。ところで日本民法第七七九条の解釈として非嫡出子と母との母子関係については、一般に認知を要せず、子の出生・分娩の事実によつて当然に発生・成立するものと解されているので、本件の場合、相手方の本国法を適用して申立人と相手方との間に母子関係の存在を確認するに支障はない。

なお親子関係の存否確認の手続については、一般に韓国においても、現にわが国におけると同じように家庭法院の審判事項とされている事情を考慮すると、本件申立を受けたわが国の家庭裁判所が、本件について、法廷地法であるわが国の法律によるべきものとして、家事審判法第二三条の審判手続によつて審判することができることは明らかである。

さて当裁判所調停委員会において当事者間に主文同旨の合意が成立し、その原因事実に争いがないし、さらに調査したところ、上記申立理由と同旨の実情のほか、建恭が昭和二四年五月一二日に届出た出生届の母欄に母の氏名として朴祥花でなく、同人の母金孝華の氏名を誤記し金俊英と記載していることが認められ、これによると、当事者間に母子関係がある旨の上記合意は正当である。

してみると、本件申立は理由があるからこれを認容し、主文のとおり審判する。

(家事審判官 西尾太郎)

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